感度と特異度

 さつき台動物病院の院長、多田です。

コロナウイルスの検査をもっとした方が良いのか悪いのか、わからないので検証してみました。

 

 検査の正確性を測定する指標として「感度」と「特異度」という指標があります。

教科書的には

・感度:病気のある患者さんに検査を行ったときに検査結果が「陽性」となる確率

・特異度:病気がない人(健康)に検査を行ったときに検査結果が「陰性」となる確率

と書かれており、さらに

・感度が高いと偽陽性が少ない!

・特異度が高いと偽陰性が少ない!

などと書かれており、頭の中は混迷を極めます。

 

 混迷の原因を突き止めるため、自分の頭の中を整理してみたところ、

臨床獣医師としては感度特異度よりも陽性適中率や陰性適中率が診断には重要だ!

ということに気が付きました。

※陽性適中率:検査が陽性になったときに本当に病気がある確率

※陰性適中率:検査が陰性になったときに本当に病気がない確率

 

 つまり臨床をしていると陽性・陰性適中率だけが重要であるが、

そもそも検査の正確性を測る指標は感度・特異度しか利用できない。

 まさに感性的な女性と理屈っぽい男性のすれ違いのようです。

 

 下図をご覧ください。

 

色々と書かれていますが、表中ABCDを用いると

・感度 A/(A+B)       ・特異度 D/(C+D)

・陽性適中率 A/(A+C) ・陰性適中率 D/(B+D)

 

となっております。

 

「検査対象となる人数」

「有病率(検査対象のうち何%の人が病気をもっているか」

「感度」

「特異度」

 

この4項目を設定すると

 

「陽性適中率」

「陰性適中率」

オマケで「テキトーに陰性と診断した時の陰性適中率(テキトー陰性率)」

 

が自動的に計算されるようになっております。

偽エクセルマスターである私が作成しました。

 先程と同じ表です。

 

 さて、3月20日の朝に神様が三連休にもかかわらず、通勤で新宿駅にやってきた人を100万人捕まえました。このうち100人がコロナウイルス感染をしていたとします。

(有病率0.01% 高く見積もってもこんなものだとして)

 

 現在行われているコロナウイルスの検査(PCR)の感度は高くても70%と言われています。特異度は高めに98%としました。

 

・陽性的中率 0.348814% 、、、、低い

 

・陰性適中率 99.99694% 、、、、高い、、と思いきやテキトー陰性率と大差なし

 

感度70%じゃあ、誤診(陽性適中率が低い)ばかりです。

 

 それよりもAとCの人数をみてください。検査ではこの人達はコロナウイルスと診断されてしまうのです。Cの人は19998人もいます。この人達はコロナウイルスで無いのにコロナウイルスと診断され入院させられます。19998床ものベッドが無駄に使われます。それに対してAの70人しか真のコロナウイルス感染者はいないのです。

 19998床のベッドは他の病気(ガンとか心臓病とか、、、)に使いたいですよね。このままじゃ助かる病気の人も助かりません。

 

 賢い臨床医は病歴を隅々まで聞き取り、細やかな診察を行い、必要な検査をすべて行います。ウソです。そんなこと忙しくてできません。限られた時間の中で、考えて考えて考え抜いて、必要な検査を行い陽性/陰性適中率を上げるプランを考えます。

 

 無名の名医が神様にお願いをしました。

「せめて新宿駅にいる発熱した人、または濃厚接触者だけを集めてくれませんか?」

 発熱者+濃厚接触者で1000人集まりました。この1000人と無作為の100万人では有病率はかなり変わってくるはずです。有病率5%としました。

 

・陽性的中率 0.348814% → 64.81481% に大幅アップ!

・無駄なベッド 19998床 → 19床    に大幅削減!

 

新宿の病院の平和は守られました。

 

2つの違いは検査対象患者を絞っただけです。

無駄なベッド数をみていただければ、この必要性がわかっていただけると思います。

 

課題

①そもそも検査の感度が低い

②病気なのに陰性と診断されるB 15人がいる

③発熱or濃厚接触者以外の感染者は見つけられない

 

がありますが、

①は新しい検査の開発を待つしかありませんが、

②の人は熱が3日以上続く(普通の風邪でない)ときに再検査を繰り返せば、

よほど運が悪くなければAに入ります。

③も後に発熱したりすれば検査対象にすれば良いのです。

 

これらの課題よりも19998床のベッドが無駄に使われ、19998人が健康なのに出勤できなくなれば社会に与える影響が大きく、問題となるはずです。

そもそも19998人の中にお医者さんが10人位いたら「誰が患者をみるんだ」状態になります。

 

まとめ

・人類は新型コロナウイルスに対して感度が70%以下の検査方法しか持っていない。

 (30〜70%と言われているらしいです)

 

・この検査方法を使って社会を混乱させないためには、対象の絞り込みが現実的にベストと思われる。

 またはベッドの数を増やす=急いで病院建てて(中国がやってましたよね)、医師看護師を増やす(無理)。

 イタリアは引退した医師を再度招集しているらしいとの報道があります。

 

・WHOでも日本政府でも林先生でも池上さんでも良いから、この内容説明してください。

 個人的には山中先生がNHKでやれば良いと思っています。

 大規模感染症を克服する仕組みを作らなければ、IPS細胞の前にいつか人類滅亡します。

 

臨床医は「感度」「特異度」にとらわれるのではなく、それらを理解した上で、

 「陽性的中率」「陰性適中率」を高める方針を考えて診療を行うこと!

 そしてワクチンのブログで述べたように、目の前の患者さんだけでなく

 集団を守ることを考えて検査・治療方針を決めること!

 その方針の結果として受ける個々の批判は気にしないこと!

 

・男性は女性の気持ちを理解して、頭を使って適切なアプローチを心がけることが必要